神仏霊場会について

趣意

わが国には神や仏の聖地が数多くある。山川林野に神は鎮まり仏は宿る。聖地は神と仏との邂逅の場である。人々は神や仏を求め、山岳や辺地に修行し、神社や寺院に参詣してきた。
そのような聖地が、特に、紀伊、大和、摂津、播磨、山城、近江など諸国に集中する。今日いうところの西国である。
この地にはわが国の宗廟たる伊勢の神宮をはじめ、二十二社などの神社や南都各宗、天台、真言、修験などの寺院が建立され、その後、浄土門各宗派、禅門各宗派、日蓮など鎌倉諸宗派が栄えるに至った。
そして伊勢参宮、熊野参詣、高野参詣、比叡参詣、西国三十三観音霊場巡礼、各宗派の宗祖聖蹟巡拝などが時代を越えて行われている。西国は神と仏の一大聖域である。ここには悠久の山河と信仰の歴史の刻まれた祈りの道がある。

神社や寺院への参詣、巡拝、巡礼は、多くの史書、参詣記、巡礼記、道中記の類に録されている。さらに各国の名所図会や案内記にも詳細に記されている。それらによると伊勢参宮、あるいは熊野参詣や高野参詣などにおいて、道中に鎮座する神社や寺院に併せて参拝し奉幣や納札などが行われている。
斯かる由緒深い神仏の同座し和合する古社や名刹を中心とする聖地に神仏霊場を整えようとするものである。

伊勢の神宮におかれては平成二十五年に第六十二回式年遷宮が行われた。また、歴史を重ねた名社や古刹においても御鎮座や開宗あるいは御遠忌などの慶讃の行事が続けられている。平成の御代はわが国の伝統的な神道や仏教は勿論のこと宗教界にとって極めて意義深い時代である。

翻って、世相をみるときに、地震洪水、戦禍災害、天変地異が頻繁に生じ、人心は乱れ、安きを得ぬこと甚だしいといえる。
願わくは、神と仏が相和し、格別の御神慮と御慈悲を以て、天下泰平、国家鎮護、万民豊楽と、世界平和、人類の共栄、生きとし生けるものの共存の甘露水を遍く垂れたまわんことを。
ここに謹んで神仏の御加護のもと、古都の森観光文化協会山折哲雄会長の呼びかけにより、西国の神社と寺院が協力して、相互巡拝を推進し、神威仏光の高揚を図るとともに、広く、宗教や思想信条を超えて、人心の平安と社会の安寧に資することを目的として、「神仏霊場会」の設立を致したく諸賢大徳の御賛同を御願い申し上げる次第である。

平成二十年三月吉日

神仏霊場会発起人

石清水八幡宮宮司 田中 恆清
賀茂御祖神社宮司 新木 直人
賀茂別雷神社宮司 田中安比呂
住吉大社宮司 真弓 常忠
大阪天満宮宮司 寺井 種伯
生田神社宮司 加藤 隆久
大神神宮宮司 鈴木 寬治
多賀大社宮司 中野 幸彦
熊野那智大社宮司 朝日 芳英
天台座主 半田 孝淳
法隆寺管長 大野 玄妙
東大寺長老 森本 公誠
金剛峯寺座主 松長 有慶
相国寺派管長 有馬 賴底
清水寺貫主 森  清範
聖護院門跡門主 宮城 泰年
妙法院門跡門主 菅原 信海
国際日本文化研究センター前所長 山折 哲雄
(順不同)

比叡山延暦寺内 神仏霊場会(設立準備室)

代表責任者(準備委員長) 比叡山延暦寺長臈 小林 隆彰
同志社大学名誉教授 廣川 勝美
事務局長 比叡山延暦寺副執行教化部長 山本 光賢